日本のMTBレジェンド和田ハジメさんが亡くなられました
日本のマウンテンバイク(MTB)黎明期から活躍し、MTBの魅力を広め大勢の人たちに影響を与えたMTBレジェンド、和田ハジメ(肇)さんが2025年12月1日に亡くなりました。享年62歳です。

新宿の早稲田にある和田さんが店長のプロショップ「トレイルストア」。
和田さんは私がMTBを始めたばかりの頃に購入した雑誌でバニーホップのやり方を紹介しており、その部分を何度も何度も読んだものでした。
インターネットが今ほど一般的ではなかった25年前、書籍や雑誌は今とは比べものにならないほど大きな影響力を持っていました。MTB専門誌やHowTo本を開けば、必ずと言っていいほど目にしたのが「和田ハジメ」という名前です。当時MTBに乗っていた人であれば、誰もが何らかの形でその影響を受けていたのではないでしょうか。

そして時は流れ、トレイルストアからTUBAGRAの商品の注文を初めていただき(8年前の2017年)、お店に納品しに行った際、当時の雑誌を持参しいかに私が和田さんに影響受けたかを熱く語ると、そこからトレイルやMTBパークライドのお誘いいただけたりと交流が始まるのでした。

トレイルでご一緒した際の和田さんの走り。この画像の和田さんは54歳なのですが、バンク状の地形で軽くバニーホップして上に飛び出しています。ストリート色もあるアクションがとても若々しい。
トレイルで和田さんの後ろを走っていると、速いライダーにありがちな「コーナーを1〜2個曲がったら見えなくなる」といったことがありません。常に一定の距離を保ち、和田さんの姿はいつも視界の中にあります。そして地形をうまく使いながら、“さりげなく(ここが大事)”カッコいいアクションを織り交ぜ、軽やかに走り抜けていくのです。
MTBを始めたばかりの頃にこの後ろ姿を目にすると、MTBの格好良さを実感すると同時に、和田さんへの強い憧れを抱かずにはいられません。
そして今年の夏、富士見パノラマで和田さんにお会いした際に、ふと気になっていたことを聞いてみました。誰かと一緒に走るとき、常に後ろの人と一定の距離を保っているのは意図的なのか、それとも無意識なのか、と。
すると和田さんは
「こういうことを聞いてくれた人は初めてだな。はい、意図的にやっています。五感を研ぎ澄ませて、後ろの人の息遣いやタイヤの音を感じ取りながら、一定の距離を保つようにしているんです」
と教えてくれました。
ご自身の走りを通してMTBの格好良さや楽しさを多くの人に伝えている。その姿勢に触れ、改めて和田さんは本当に凄いライダーだと感じました。

その会話の翌日、ありがたいことに和田さんよりお誘いいただき、ウチの息子と一緒に富士見パノラマのコースを数本走ることができました。

息子に和田さんの後ろを走ってもらい、その姿を私は眺めながら走りました。
走り終わって息子に和田さんの後ろを走った感想を聞くと「何故だかよく分からないけれど、後ろをついていくと、とても走りやすかった」
そうなんです。息子のHAYABUSAは24インチホイールのダートジャンプバイクなので走破性は高くありません。和田さんが乗るMTBは29のフルサスバイクであまり路面に気を遣わず走っていけますが、後ろの息子が走りやすい凹凸の少ないラインをわざわざ選んで走られていたんですね。
先行する和田さんと、それについていく息子の2人の走行ラインを後ろから見ていて、和田さんの後ろを走るライダーへのさり気ない気配りに、改めて凄いと思うのでした。
これが私が和田さんと一緒に走った最後となりました。
そして今年はトレイルストアからたくさんフレームのご注文をいただきました。本当にありがとうございます!

お店にフレームやパーツを納品しに行くと、そこから大抵1時間以上の長話となり、最近のMTBパーク事情やトレイル話、ライダーたちの動向、MTB界隈の話などで盛り上がりました。
お店に最後にうかがったのは10月後半で、その際に和田さんからニセコのバイクパークでのライディングのお話をたくさん聞かせていただき、「来年はニセコで一緒に乗ろう!」という言葉を交わしてお店を後にしました。それは叶わなくなってしまいましたね…
先日、和田さんのお通夜に参列してきました。和田さんのさすがの人脈でMTB・BMX繋がりの顔でいっぱいでしたね。喪服だと最初誰だか分からない人も。
和田ハジメさん、MTBの魅力をたくさん教えてくださり、本当にありがとうございました。私にどこまでできるかは分かりませんが、和田さんから教えていただいたMTBの楽しさや魅力を、少しでも多くの人たちに伝えていけたらと思います。







































