日本のストリートトライアル、のみならずMTBストリートシーンにも多大な影響を与えたWebサイト「公園トライアル」をご存知でしょうか?
mixiを始めとするSNSブーム、それ以前の無料BLOGブームのさらに前に存在していた、ストリートトライアルやMTBストリートの情報を発信していたWebサイトで、既にネット上から消滅して長い年月が経っていますが、毎日のように更新されていた日記、活発な交流のあった掲示板(BBS)を楽しみにしていた人たちは少なくなかったと思います。(僕もその1人でした!)
今日、そんな「公園トライアル」の管理人だったミナミさんに10年以上ぶりに会い、この度インタビューをさせていただきました。
ハッキリ言いまして、当時の僕にとって「公園トライアル」管理人のミナミさんは憧れの存在でした。
当時のMTB〜トライアルシーンの中では珍しく、さり気なくストリート色のあるファッションに身を包み、格好いい愛車に乗ってフィールドに登場。肝心のライディングは攻め攻め。そしていつも一緒にいる可愛い2人の娘さんの育児もしっかりされていて…
その頃の20代後半に差し掛かった自分にとっては、まさにミナミさんは「憧れの大人なライダー」の何者でもありませんでしたね。
そんなミナミさんにかれこれ10年以上ぶりに会い、インタビューさせていただく機会を得た訳ですが、会える楽しみよりも緊張の方が上回って大変!ところがご自宅前で顔を見た時、つい数年前にも会ったんじゃ?という錯覚を覚えるくらい親しみが湧き上がり、そんな緊張はどこへやら。
公園トライアルをご存知の方でしたら懐かしく、全く知らない方でも「へー、日本のストリートトライアル、MTBストリートシーンにはこんなことがあったんだ!」という感じで読んでいただけたら幸いです。
それでは、公園トライアルのミナミさんインタビュー(対話形式)スタートです。
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サモ:今となっては「公園トライアル」やミナミさんをご存知ない方も多くいらっしゃるかと思いますので、まずは現在の年齢とご職業を教えていただけないでしょうか?
ミナミ:今年で52歳。職業はIT関係の会社員で、会社は当時のままずっと勤めています。サモさんと出会った時、自分は30代半ばだったよね。
サモ:ハイ。僕は今年で44歳になるので、既に出会った頃のミナミさんの年齢は超えちゃいました。
ミナミ:随分時間が経ったんだね〜
サモ:スポーツバイク歴を教えていただけないでしょうか?
ミナミ:30代前半にちゃんとした自転車が欲しいと思って、MTBが趣味だった親戚の行きつけのショップに行ってGTの完成車(エントリーモデル・アローヘッド)を購入し、ショップの里山ツーリングに参加して「こりゃあ面白い!」ってハマったのが最初かな。
※当時の画像は残ってないので他のGT アローヘッドの写真です。
サモ:最初は里山だったんですね。そこからどうやってストリートトライアルにハマったんですか?
ミナミ:子供の頃からスーパーカーのレースみたいに自転車で走り回るのが好きで、購入したMTBで近くの公園にあちこち走りに行っていたんだよね。そして、たまたま「◯本杉公園」に行ったらコアなトライアルライダーがたくさん集まっていて、その中に「工藤さん、今村さん、サイキさん」が来ていて、トリックやバイク・パーツについて色々教えてもらったのがトライアルとの出会いです。
そして、GTアローヘッドをトライアル仕様に改造し「◯本杉公園」に通い始めました。
サモ:ほほー。でも、それだとガチなトライアルで「ストリートトライアル」ではないですよね?どこで「ストリートトライアル」に出会ったのでしょうか?
ミナミ:「◯本杉公園」で水野(ハルオ)君と知り合ったことかな。何も無い平地でいきなり360をしたのが格好良くて衝撃だった。当時の彼のライディングは誰とも違っていて凄く影響を受けたね。
元々自分は細かいバイクコントロールでセクションを走破していくよりも、大きく飛んだりデカイ岩に飛び乗ったりするような派手で目立つライディングの方が好きだったので、自然とストリートトライアルに移行して行った。当時TBSで放映していた「筋肉番付」(ゴールデンタイム放映の1時間番組で、トライアルバイクでド派手な人口セクションをクリアーしていくコーナーがあった)の影響もあったし。
それから水野君と一緒にスケートパークでも乗ったりして、ストリートの世界にどっぷり。
サモ:水野(ハルオ)君とは今でも良く一緒にフレーム作ったり乗ったりしていますけど、彼、そんなに凄い存在だったんですね…(汗)
※最近の水野(ハルオ)君のライディング。15年以上前からこのスタイルを維持し続けている。
サモ:それでは本題ですが、当時、「公園トライアル」というWebサイトを始めたキッカケを教えてください。
ミナミ:日本のインターネット黎明期、それこそブラウザがモザイクとかの時代に、会社で1人1台パソコンが割り振られて、PCのセットアップも自分でしなくちゃいけなくて、Webサイトについても自分で調べる必要があった。それなら自分の好きな自転車のWebサイトを作ってみようと。ただ作るだけじゃなくて、更新しやすいコンテンツ(継続的な更新ができる「日記」など)も計画して作ったのは、当時としては珍しかったんじゃないかな。
ちなみに、「公園トライアル」というタイトルは、水野(ハルオ)君が作った造語をそのまま借りたものです。
サモ:え、そうなんですか!?水野君スゲェ!!
サモ:「公園トライアル」を始めた当時のMTBシーン、というかストリート・トライアルシーンはどのような感じでしたか?
ミナミ:専用車という物は一切無くて、サスフォークが付き始めた普通のMTB(クロカンのSサイズ)をトライアル仕様に改造していたね。
サモ:フレームもクロカン用とかだったから、本当に良く壊れましたね。
ミナミ:メカメカしい物が好きだったから、当時はフルサスのダウンヒルバイクも持っていたな〜。
サモ:乗っていたMTBの紹介をお願いします。
ミナミ:最初がGT アローヘッド。次にAZONIC DS1にフレームを乗せ替えて乗っていたな。
※当時はアルミ製のフレームが主流で、スラロームフレームがストリートトライアルフレームのベースとして良く使用された。
そして次は仲良くしていたサモさんが立ち上げたTUBAGRAのアルミ製MOZUに乗り替えました。
※小川輪業の小川さんが保存していた貴重なミナミさんのMOZUの画像
MOZU(アルミ製)に最初に乗った時は乗り味がクイックだと感じたなー!それと自分のフレームのシリアルナンバーが0001だったので、それがめっちゃ嬉しかったですね。
サモ:そう言っていただけるととても嬉しいです!公園トライアルあってのMOZUだったので、やっぱりミナミさんには最初の1本目を乗ってもらわなくては!と思ってそのようにしました。
ちなみにアルミ製のMOZUはリアセンターが415mmと当時としては短かったですが、今のクロモリMOZUは26インチ仕様でリアセンターは355mmになっています。機材の進化ってヤツです…
サモ:「公園トライアル」を始めて「反響が大きくなったな」と感じたのはどんな時でしたか?
ミナミ:カウンターが500を超えた頃かな?(当時のWebサイトは1日に何人訪れたか一目で分かるカウンターをTOPページに掲載していた物が多かった)日記をマメに更新していて、見る人が多かったからだと思う。他にそんなサイトが無かったからね。
そして掲示板(BBS)に集う人が増えてきて、雑誌から声がかかってバイシクルクラブに紹介された時かな〜。
サモ:うわー、「公トラ掲示板」懐かしい!日記と掲示板の2つが本当に楽しみで毎日、というか1日に何回も見てましたよ!
※バイシクルクラブで紹介された記事。
※ロードバイクばかりの今のバイシクルクラブでは考えられないような巻頭見開きカラーで紹介されもしました。
サモ:「公園トライアル」を始めて良かったことは何でしょうか?
ミナミ:友達が増えて交友関係が広がったこと!
サモ:「公園トライアル」の運営で大変だったことは?
ミナミ:日記の更新をちゃんとしないといけないこと。他はあんまり大変だった記憶がないな〜。
そういえば一度、掲示板で(今で言う)炎上をしかけたことがあったっけ?上手いライダーが高いところからドロップする動画を誰かが貼ったら、「子供が真似したらどうするんだ!」って書き込まれて(苦笑)でも、公トラ掲示板に来ていた人たちがみんな大人というか良い人達ばかりで「コントロールできるライダーだからできるんだ」って説得してくれて大事にならなかったんだよね。
サモ:ああー、そのエピソード覚えています!掲示板に集う人たちは面白くて分別の分かる大人な方が多くて、とても居心地が良かったな〜。
サモ:「公園トライアル」で開催したイベントで想い出深いことはありますか?
ミナミ:特別大きなイベントは開催しなかったけれど、オフ会で二子玉にジャンプランプを持ち込んでみんなでワイワイ楽しんだことかな?
サモ:それ僕も参加しました。他の関係無い人もたくさんいる河原の広場でしたし、今だったら絶対できないことしていましたよね(笑)
サモ:そんなにハマっていたストリートトライアルや「公園トライアル」からどうして離れてしまったのでしょうか?
ミナミ:足首を怪我してあまり乗れなくなってしまったのと、その頃に他にも魅力的と思えるトライアルを扱ったWebサイトが出てきたので、別に「公園トライアル」が無くても別に構わない、という状況になっていったこと…かな?実は良く覚えていないんだよね。
何となく自転車に乗らなくなって、クルマや音楽に興味が移って行った感じかな。
サモ:現在の趣味を教えてください。
ミナミ:音楽に一番ハマってますね。バンドを2つやっていて 1つは怒髪天というバンドのコピーハンド「蒼弐才(あおにさい)」。コピーバンドのカラオケコンテストで優勝もしたことがあって、その世界では知名度はあります(笑)
2つ目はZIGGYのコピーバンドの「マザーファッカーベイビーズ」如何に本家に似せて演奏するかが肝で、ちょうど昨日ライブがあったんだ。ド派手な衣装にカツラとメイクで!
今年はバイオリンのプレイヤーと組んで色々やる予定です。
サモ:スーパーカー世代のミナミさんと言えばクルマも忘れちゃいけないので、愛車遍歴も教えてください。
ミナミ:「公園トライアル」の時期からだと、最初はMAZDAのボンゴフレンディ。屋根が開くヤツ。
その次はシボレーアストロで、キャンピングトレイラー付けて毎週のように子供たちと遊んでいたな。
サモ:これには自分も何度か乗せてもらって想い出深いです。
ミナミ:トレイラーを手放したと同時にジネッタG4。
サモ:下の娘さんと一緒に日本各地に走りに行っていましたよね。
ミナミ:自転車から離れてからはキャンビング仕様のダッジバン。
変なカラーリングだけど、雑誌のコンテストで優勝したこともある(笑)
次に1台目のフィアットパンダ。
その次に今は修理中で動かないけどロータスヨーロッパ。
そして現在の2台目フィアットパンダ。
サモ:チョイスが渋くて格好良すぎですよ!
サモ:せっかくなので、今持ってきているTUBAGRAのバイクに乗ってみませんか?
ミナミ:あ、乗ってみたい!今でも上手く乗れるか分からないけど…
※croMOZU275とSHAKA24に乗ってもらいました。
サモ:問題無くできているじゃないですか!どれくらいぶりにバニーホップやダニエルをされたのですか?
ミナミ:ダニエルは数年ぶりぐらい。バニーホップは多分10年以上はやってなかった。昔は凄く大変だったのに、コレ簡単にできるね!
サモ:最新のアクション系MTBに乗った印象はどうでしたか?ジオメトリやパーツの進化なども含めて。
ミナミ:おっかなビックリ乗ったのに簡単にバニーホップのカタチが出来たことに驚いた!単純にフロントが上げやすいということではなく、バランスが良くバイクが軽く感じたな。
サモ:再びアクション系MTBをしてみたいと思いましたか?
ミナミ:うん、また乗りたくなってきた!全然乗ってないクラシックなNORCOをまだ持っているので、使えるパーツを移植すれば低コストで組めそうな気がしているけど…最近の高性能なパーツも使ってみたいな。
※往年のストリートトライアラー、Ryan Reachのシグネチャーモデル。
サモ:今振り返ってWebサイト「公園トライアル」はミナミさんの人生に何を与えてくれましたか?
ミナミ:世代に関係なく付き合える友人が大勢出来たことが事が一番だな。乗らなくなってから長いけど、トライアルやストリートの世界は自分がいつでも戻れる場所という気がしてる。
サモ:ぜひまた戻ってきてください!!楽しみに待っています!!
ミナミさん、今回は本当にありがとうございました!!